騒音規制法とは?法律で規制される騒音の基準と対象は?

騒音規制法とは?法律で規制される騒音の基準と対象は?

工場や事業場、建設現場などではかなりの騒音が発生するケースが多くあります。また、自動車などから発生する音も騒音とされます。

騒音は、健康的な日常生活を妨げる要因の一つです。工事などが自宅の近くで行われた場合、うるさくて眠れない・気になって集中できないなどの経験をしたことがある方もいるでしょう。日本では、これらの騒音を規制するために、「騒音規制法」が定められています。

本記事では、騒音規制法とはどのような法律なのか、規制される対象、規制基準、罰則などを詳しく解説します。ぜひ参考にしてください。

 

1. 騒音規制法とは?

騒音に係る苦情件数

環境省の「令和4年度騒音規制法等施行状況調査」によると、騒音に関わる苦情件数は工場・事業場が5,236件(25.6%)、建設作業が7,736件(37.9%)でした。全体20,436件のうち、工場・事業場、建設作業での件数は60%を超えており、かなり多いことがわかります。

騒音規制法とは、こういった工場や事業場、建設作業、自動車などから発生する騒音を規制する法律です。人々の生活環境を保全し、国民の健康を保護するため、昭和43年に制定されました。

騒音規制法では、都道府県知事に対し、住民の生活環境を保全する必要がある地域を騒音について規制する地域として指定しなければならないとしています。

また、発生する騒音について規制する必要の程度に応じ、昼間、夜間などの基準の範囲内において、規制基準を定めなければならないとしています。地域により規制基準は異なるため、お住まいの窓口に確認しましょう。

参考:環境省『騒音規制法の概要

 

2. 騒音規制法で規制される対象と基準は?

騒音規制法で規制される対象は、以下の4つが挙げられます。

  1. 工場・事業場騒音の規制
  2. 建設作業騒音の規制
  3. 自動車騒音の規制
  4. 深夜/夜間の騒音等の規制

    騒音の種類により、具体的な音量の基準が設定されています。ここでは、それぞれの規制を詳しく解説します。

    2-1. 工場・事業場騒音の規制

    工場・事業場騒音の規制

    規制対象となるのは、指定地域内で特定施設(金属加工機械、空気圧縮機および送風機、織機、建設用資材製造機械など)を設置している工場・事業場から発生する騒音です。工場・事業場における騒音の大きさや作業時間などは、以下のように定められています。

     区域/時間 昼間 朝・夕 夜間
    第1種区域 45~50db 40~45db 40~45db
    第2種区域 50~60db 45~50db 40~50db
    第3種区域 60~65db 55~65db 50~55db
    第4種区域 65~70db 60~70db 55~65db
    • 第1種区域:良好な住宅の環境保全のため、特に静穏の保持が必要な区域
    • 第2種区域:住宅用の地域のため、静穏の保持が必要な区域
    • 第3種区域:住宅、商業、工業用の地域であり、住民の生活環境の保全のため、騒音の発生防止が必要な区域
    • 第4種区域:工場が主な用途であり、住民の生活環境を悪化させないため、著しい騒音発生を防止する必要がある区域

     

    2-2.建設作業騒音の規制

    建設作業騒音の規制

    規制対象となるのは、指定区域内で行われる特定建設作業にともなって発生する騒音です。特定建設作業には、以下のような例が挙げられます。

    1. くい打機・くい抜機またはくい打くい抜機を使用する作業
    2. びょう打機を使用する作業
    3. さく岩機を使用する作業
    4. 空気圧縮機を使用する作業
    5. コンクリートプラントを設けて行う作業
    6. バックホウを使用する作業
    7. トラクターショベルを使用する作業
    8. ブルドーザーを使用する作業

    建設作業における騒音の大きさや作業時間などは、以下のように定められています。

     規制の種類/区域

    第1号区域 第2号区域
    騒音の大きさ

    敷地境界において85dbを超えないこと

    左に同じ
    作業時間帯 午後7時~午前7時に行われないこと 午後10時~午前6時に行われないこと
    作業時間 1日あたり10時間以内 1日あたり14時間以内
    連続6日以内 左に同じ
    作業日 日曜日、その他の休日でないこと 左に同じ
    • 第1号区域:良好な住宅の環境を保全するため、特に静穏の保持が必要な区域ほか
    • 第2号区域:指定地域のうちの第1号区域以外の区域

     

    2-3.自動車騒音の規制

    自動車騒音の規制

    自動車騒音では、自動車単体から発生する騒音・道路から聞こえる騒音が対象です。一定の条件で運行する際に発生する騒音の大きさの限度は、環境大臣により定められています。自動車騒音の要請限度は、以下のとおりです。

     時間区分/
    指定地域

    a区域 b区域 c区域
    1車線 2車線以上 1車線 2車線以上 1車線以上
    昼間

    午前6時~
    午後10時

    65db 70db 65db 75db 75db
    夜間 午後10時~
    午前6時
    55db 65db 55db 70db 70db
    • a区域:専ら住宅用に利用される区域
    • b区域:主に住宅用に利用される区域
    • c区域:相当数の住居と併せて商業、工業などに利用される区域

    指定地域内の自動車騒音が要請限度を超過しており、周辺の生活環境が著しく損なわれていると認められる場合、市町村長は都道府県公安委員会に対し、改善などの要請を行えます。要請限度を超えていない場合でも、騒音を小さくするように意見することも可能です。

     

    2-4.深夜/夜間の騒音等の規制

    深夜_夜間の騒音等の規制

    深夜・夜間の騒音などの規制に関しては、地方公共団体が必要な措置を講ずるとしています。東京都における深夜、夜間営業に関する規制基準をご紹介します。

     種別 該当する区域 音量
    第1種区域 第1・2種低層住居専用地域田園住居地域
    AA地域
    これらの地域に接する地先及び水面
    40db
    第2種区域 第1・2種中高層住居専用地域
    第1・2種住居地域
    準住居地域
    第1種、第3種、第4種区域を除く無指定地域
    第1特別地域
    45db
    第3種区域 近隣商業地域・商業地域・準工業地域(第1特別地域を除く)
    第2特別地域
    これらの地域に接する地先及び水面
    50db
    第4種区域 工業地域(第1・第2特別地域を除く)
    第3特別地域
    これらの地域に接する地先及び水面
    55db

     

    第2・3・4種区域内に所在する学校・保育所・病院・診療所・図書館・老人ホーム・認定こども園の敷地の周囲おおむね50メートルの区域内における規制基準は、表の音量から5dbを減じた値となります。

     

     

    3. 騒音規制法の罰則とは?

    騒音規制法の罰則

    指定地域内において、工場や事業場に特定施設を設置する・特定建設作業を行う場合は、市区町村や特別区長に届出を行わなければならないとされています。届出の期限は、特定施設を設置する30日前、特定建設作業は作業を行う7日前です。届出がない場合や不備がある、改善命令に従わない場合は、罰則を受ける恐れがあるため注意しましょう。

    違反による罰則の詳細は、以下のとおりです。

     騒音の種類 違反行為 罰則 騒音規制法施行令
    工場や事業場 改善命令に反して基準値以上の騒音を立て続けた 1年以下の懲役または10万円以下の罰金 第29条
    無届または虚偽の届出をした 5万円以下の罰金 第30条
    報告の虚偽や検査を拒む・妨げる・忌避をした 3万円以下の罰金 第31条
    建設工事作業 改善命令に反して基準値以上の騒音を立て続けた 5万円以下の罰金 第30条
    無届または虚偽の届出をした 3万円以下の罰金

    第31条

    報告の虚偽や検査を拒む・妨げる・忌避をした

     

    参考:東京都環境局『深夜の営業等の制限|法律・条例による規制について
     

    まとめ

    • 騒音規制法とは、工場や事業場、建設作業、自動車などから発生する騒音を規制する法律
    • 指定区域内で特定施設を設置している工場や事業場から発生する騒音に対し、区域や時間帯の違いにより音量の規制がされている
    • 指定区域内で行われる特定建設作業を行う場合に発する騒音に対し、区域や時間帯の違いにより音量の規制がされている
    • 自動車から発生する騒音・道路から聞こえる自動車騒音に対し、区域や時間帯の違いにより音量の規制がされている
    • 深夜営業に関する規制基準が地方公共団体別に設定されている
    • 工場や事業所を設置する・建設工事作業を行う場合、届出が必要
    • 届出を行わない・改善命令に従わない場合は罰則の対象となる

     

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